ところてんダイエット

このところ、というかこの数年来になるのだが、体重が増えてきている。

それはもう、見て見ぬふりで押し通すこともできないほど顕著な傾向であり、結婚してからもその趨勢は一向に変わらない。

嫁さんからも何度か忘れた頃に指摘され、やんわりと減量を促されてはいたのだが、思い立ってスクワットや腹筋など始めてみても、気が付けばフェードアウトしているような始末である。

見るに見かねたのであろう、彼女は2ヶ月ほど前から食事の際にところてんを出してくれるようになった。聞くところによると、テレビなどでも紹介され、それなりに定着しているダイエット法の一つなのだという。

ぼく自身は寡聞にして知らなかったのだが、少し検索してみると、ところてんによるダイエットの主要な利点ないし効能は次のようなものであるらしい。

・ところてん自体のカロリーが極めて低いこと(100gで2kcal)。

・食物繊維による整腸効果。

・食前に摂ることで満腹感を得られ、食べ過ぎを防ぐこと。

・糖やコレステロールの吸収阻害。

・余分なコレステロールの体外排出効果。

うむ、いいところしかないな。

こんな風に謳われる効用が科学的にどれほど信憑に値するのか、その辺の評価は専門家に任せるとして、しばらくの間ところてん食事法を続けてみての実際の成果はというと――どうやらこれがなかなかに効いているようなのである。

正確にいつから始まったかも記憶していないので厳密ではないが、ところてんを食べ続けてきたおそらくはこの2ヶ月ほどの間で、2~3㎏の体重減があった。極端な食事制限をする場合に比べれば大した効果でもないのかもしれないが、まったく運動もしないままなのに確実な成果が見られているとも言える。

もちろん、すべてをところてんの力に帰するのはあまりにも早計だろう。一回の食事で食べる白米の量も気持ち減らすようになったし、会社で食べる昼飯の量をセーブしているのも地味に効いているのかもしれない。だから、「ところてんはダイエットに効果がある」という命題を立証する明示的なデータは持ち合わせていない。ただ、次のことは確実に言える。ところてんを食べ始め、ダイエットをはっきり意識するようになって以来、体重増加に歯止めがかかり、それどころか着実な逓減傾向を示しつつある、と。要は、それが心理的な効能に過ぎないのだと仮定しても、ところてんとダイエットの間に正の相関関係が成立しているらしいという現状がある以上、ところてんを食べることはぼくにとってダイエット効果を発揮している、ということである。それで十分だ。

べつにぼくはところてん屋の回し者ではないので、これくらいにしておこう。あとは、ところてんさえ食っていれば痩せる、などという妙な幻想を抱かないようにすることだ。言うまでもないが、食べさえすれば痩せるような奇跡の食物は存在しない。もし何かを食べるだけで痩せたのなら、それは腐っているか、さもなくば毒である。