嫁さんに語る

積ん読の消化はわりと順調に進んでいるのだが、やはりただ読むだけでは味気ないし身になるものも少ない。

そこでまあ書評というか、感想程度のものを書こうと常々思っているのだが、なかなか踏み出せないままでいる。

一つの大きな理由としては、ぼく自身の怠惰の他に、誰に向けてどのように書くのかという点が曖昧なことが挙げられるだろう。メモ程度のつもりで始めた場末のブログといえど、潜在的にはネットの繋がっている限り全世界に開かれているわけだし、読まれることへの意識は必ずつきまとう。自意識過剰であるという思いはない。サルトルも言っているように、「書く」ことは、いつだって誰かに向けて書くことなのだ。

で、考えた結果、嫁さんに向けて書くというのが妙案ではないかと思うようになった。そうすることでまず、誰に向けてどのようにという部分が明確な焦点を結ぶし、何より嫁さんはこれまでも、ぼくの思考に対する最も鋭い批評者であり続けてきた。これからもきっとそうだろう。彼女は取り立てて人文社会科学に関するアカデミックな専門訓練を受けたわけではないが、だからこそ、ぼくがわかったつもりで読んでいる本を実際にどれほど消化しているのか、理解できているのか、そしてそれを人に説明できるのか、要するにその読書が本当に実を結んでいるかを測る貴重な試金石となってくれるに違いない。お互いの勉強にもなるだろう。

そんな風な思いから、今後は「嫁さんに語る」という形式で読書についての文章をちょくちょく書いていきたい。嫁さんよ、どうかよろしく。